学習塾経営において、この2年間は非常に厳しい年となっております。
エリアや規模・実績によって異なったものの具体的には、
・「2022年」は通年通じて新規問合せ数、入会数共に減少
・「2023年」は新規問合せはあるものの、入会率が低い
といった傾向にあります。
【学習塾経営が置かれている外部環境】
冒頭、学習塾経営が苦戦している旨を記載いたしました。
その背景として「少子化」「競合増加」に加えて「不景気(実質賃金の低下)」が挙げられます。
少子化
ご存知の通り国内においては、少子化が進んでおり2022年は出生数が速報値で80万人割れ(確定値だと77~78万人か?)となっております。
2002年からの出生数の推移
※出典:厚生労働省データ
※2022年は速報値を基に予想
2016年に出生数100万人を割ってから、わずか6年で80万人割れとなり6年間で約20%減少しております。
現在の学習塾マーケットの対象は主に「中学生」のため、すぐに影響は受けにくいですが、3年後(2026年)には約5%、6年後(2029年)には約8~9%対象人口が減少していきます。
また、難関校・ブランド校を除いて受験ハードルが下がるため、そもそも学習塾への通塾率が低下する恐れがあります。
不景気(実質賃金の低下)
こちらもご存知の通り、物価高騰により実質賃金の低下が著しく、12ヵ月連続で実質賃金の低下が起こっております。
2~3%減少しておりますが、一般的な世帯年収の家庭の場合、月に1~2万円ほど利用できる金額が減ることを意味し、不景気にも強いと言われていた教育業も影響を受けております。
【学習塾経営における課題】
上記のような外部環境の結果、学習塾経営で顕在化している課題としては以下となります。
通塾時期の後倒し
家計が厳しくなったことで、通塾時期の後倒しが始まっており、生涯顧客単価が減少しております。また、即決営業が決まりにくく、問合せから入塾までの期間が長くなっており、顧客管理が以前より複雑化しております。
平均月謝単価の減少
上記同様、週回数や講習単価(コマ数)などが減少傾向にあります。
企業間・教室間格差の拡大
「合格実績」「ブランド」「月謝単価」に加えて「人材力」などの要因で、企業間での格差、同法人だったとしても教室間の生徒数・業績の格差が大きくなってきております。
【課題解決の方向性】
今後も少子化、不景気(実質賃金の低下)が進む中で、経営課題の解決をするためには以下のような方向性が考えられます。
シェアアップ
対象人口減少よりもシェアを上げることで売上や利益を伸ばしていきます。
各社生き残りをかけて、競争激化することが予想されますので「合格実績・成績アップ実績の強化」「商品の見直し」「マーケティング強化」「人材育成の強化(退塾防止・クチコミ強化)」などを行っていく必要があります。
生産性向上
対象人口減少とともに生徒数・売上が20~30%減少したとしても利益を残していく戦略になります。「DX(デジタル・AI)」中心に「人件費」をどう最小化するのかがポイントとなります。
おそらく学習塾業界では「自立指導」となり、先生1人で10~20人の生徒を同時で見るモデルになることが予想されます。上記の場合はコーチング力が重要となり「管理・伴走力」が大切になります。
業態付加(LTV最大化)
以前、学習塾教室が「そろばん教室」を付加することが流行った時代がありました。上記は、そろばん教室での売上に加えて、学習塾の見込み客を集める戦略となります。
以前は「そろばん教室」でしたが「プログラミング教室」「英会話教室」などニーズの高い業態を付加することでLTV(ライフタイムバリュー)の最大化を目指します。
【具体的なアクションプラン】
では、実際にどのようなことを行っていけばよいかという具体策をお伝えいたします。
生徒募集:デジタルマーケティングへのシフト
ご存知の通り、紙媒体(折込・ポスティング)からの反響率が減少しております。特に都心部ではその傾向が著しく、新たな生徒募集方法・販促手法の確立が必要になります。
その中で、近年高い費用対効果を実現しているのが、デジタルマーケティングとなります。
単にHPを作ってSEO対策を行うではなく「リスティング広告」「ランディングページ作成」「コンテンツSEO」「WEB上での口コミ対策」「SNS活用」「SNS広告」など総合的な運営が必要となります。
上記対策をしっかり行えば、コンバージョン(問合せ獲得)単価が1.5~2万円となっております。
採用・定着力強化
生徒募集に加えて、人材面も今後対策が必要になります。労働人口が減少する中で「採用・定着」共に難しい時代になることが予想されます。
採用面では「採用HPによる魅力の訴求・ブランディング」「露出の最大化=採用媒体の最適化」「クチコミ対策」「労働環境等の改善」などの対策が必要です。
また、定着面については、「ビジョン・ミッションの創造」「キャリアビジョンの構築」「評価制度」「1on1の導入」などが求められます。
人材が安定している法人ほど、生徒募集が安定しているため、年間の離職率が10%を超える学習塾は対策が必要になります。
人材の早期育成
上記で人材定着についてお伝えいたしましたが、一方で今後、定着力が下がっていく可能性が高いため、人材の早期育成できる環境の整備が必要になります。
例えば、今まで教室長を育てるのに1年間かかったものを「研修制度」「マニュアル」「業務分担」などにより、6ヵ月にしていく必要があるということです。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)
生産性を高めるためにDX活用する以外にも「生徒数増のためのマーケティング・オートメーション」「間接業務を効率化することで採用強化・定着力強化」など、これまででてきた経営課題を解決するためにも「DX」は必要になります。
以上、【2023年】学習塾経営の時流・経営戦略の解説でした。
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